フロイトとアブラハム
第一回イントロダクション その2
対象関係論の源流として、
クラインの源流を辿るとまた、そこにフロイトとアブラハムがいるようにも思われる。
クラインは、その論文の中で、A.フロイトに対抗して「自分こそがフロイトを継承する
考え方をもつ者であり、アンナではなく自分なのだ」と言い放っているのには驚く。
フロイトの弟子の中で同時期を生き、性格もフロイトとの関係も対照的なのは、
これについては、セミナーの中で松木邦裕先生が少し触れていた。
「ユングのようないい加減な人間ではないが、非常にまじめで実直、フロイトの信頼も
篤かったがあまりおもしろみのない人間だったようだ」と。
以前、藤山直樹先生が、「アブラハムとユングはフロイトのお気に入りの弟子だった
が、フロイトが高く評価したのは、ユングのはそのセンスであり、アブラハムはその人
格だ。アブラハムは自分を裏切らないと信頼していたようだ」とも言っておられたよう
に記憶している。
アブラハムとユングは仲が悪く、二人の険悪な関係を取り持とうとして両者を説得し
たことがあったようだ。結局アブラハムはフロイトの助言を受け入れ和解の手紙をユン
グに送ったようだが、ユングはそれを無視した。
フロイトの弟子として、このアブラハムとユングの他にランク、フェレンチイ、アレキ
サンダーの5人が弟子5人組であるが、その中でもアブラハムは一番フロイトに忠実
に、その理論にそって独自の考えを展開していった人のようである。しかし、精神分析
業界界隈では、その堅物でリジッドなところが気にくわないと人気はあまりなかったようだ。
とはいえ彼は組織運営の力もあり、のちにベルリンで訓練機関を設立し多くの弟子の育成をしている。
彼が育てた弟子の一人に、かのメラニー・クラインがいる。