精神分析的心理療法 対象関係論 カウンセリング

あさ心理室でこころを学ぶ

心理臨床や精神分析についての学び

アブラハムの躁うつ病研究

 第一回イントロダクション 4.21.2019 その3

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アブラハムは入院中の躁うつ病患者の治療を通して、精神分析の理論を発展させた。

彼の理論に寄れば、躁うつ病の固着点は肛門期前期と肛門期後期にあるとされた。

フロイトの理論の中でもっとの重要な時期は男根期である。

この時期におけるエディプスコンプレックスをめぐるテーマの重要性を覆し、むしろ早

期の精神発達に注目する考え方はフロイトの理論の離反ともいえる。フロイトの忠実な

弟子というイメージが強いアブラハムであるが、実際はフロイトの理論をさらに展開し

てそれを超えていく考えを打ち出している。

 子どもの親への反発に対して、親側もガチでむきになる場合もあれば、何となく許し

てしまう場合もあり、それは子どものパーソナリティーや親子の相性によるように思

うが、フロイトユングの関係とフロイトアブラハムの関係の成り行きの違いは、

そうしてみるといつの世もどこの世界でもよく似たことが起きていると思える。

 

アブラハムは、この肛門期におけるアンビバレント、愛と憎しみのせめぎあいの問題を

重要視した。この時期の投影や取り入れといった機制が持つ意味合いも重要なものとし

て捉えている。そしてこれらの理論はその後メラニークラインへと大きな影響を与えて

いく。クラインが取り組む3歳以前の子どもたちへの精神分析的治療を応援する。

 この件についてフロイトは批判的な手紙をアブラハムに送っているようだが、これに

対しては、早期の乳幼児期の子どもへの臨床的研究がその後の精神分析の発展に重要な

ものになるだろうと言い、クラインを擁護したという。

 

その後、アブラハム躁うつ病治療を通して得た考えがフロイトにも影響を与えてい

き、フロイトは「悲哀とメランコリー」(1917)という論文をかく。

これがフロイトにおける対象関係論的な視点のスタートとなり、さらには超自我形成に

関連した理論へと流れていく。

 

 アブラハムの論文集の中、特に「心的障害の精神分析に基づくリビドー発達史論」に

おいては、躁うつと強迫との密接と両病理の差異について論じられている。

 

うつの病理は、愛する者に対しての幻滅を埋めるために対象を取り入れて体内化する。

対象をかみ砕きむさぼり食うというカニバリステックな活動への退行である。体内にあ

る対象は糞便と同じような価値と持つものとなり、それを排出することと保持すること

の葛藤がそこに起きる。口唇サディズムへの退行である。

強迫神経症においても対象の保持と支配が問題になるが、うつのような全面的な対象の

体内化ではなく、部分的であり、対象は外界に置かれる形になる。