精神分析的心理療法 対象関係論 カウンセリング

あさ心理室でこころを学ぶ

心理臨床や精神分析についての学び

精神分析Early Bion-クラインからの学び

 

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Bion

第4回 ビオンの精神分析 前期

 メラニー・クラインの精神分析から、

 拡張して理論を展開していった流れが紹介された。

 

ビオンの言葉である。

分析経験は患者の苦痛に苦しみ、持ちこたえる能力を高める。

 

苦痛そのものはなくなることはない。

大切な人が死んでしまえば、辛いし悲しい。

たいしたことはないとか、そんなこと全く堪えていない。

そう思うことの方がおかしい。しかし、人はその悲しみがあまりに大きく辛い時に

その辛さから目を背けて、大丈夫だと思い込もうとする。

そのためにこころがずいぶん無理をして、

別の形で問題が起きる。

眠れないとか、吐き気が続いて食欲がないとか、頭痛か酷くて学校へ行けないとか。

本当の問題に目を向けてじっくり悲しむことが出来たとき、

こうした症状が緩和される、なくなることがある。

 

ビオンの人生。

これもまたドラマチックであり、悲惨な喪失を体験している。

 

ビオンは1945年から8年間メラニークラインの精神分析を受けている。

彼が48歳から56歳の時である。

1950年代、彼は精神病や境界精神病の精神分析を通して、

代表論文の「Attacks on Linking」を出す。

連結への攻撃、ここにビオンのオリジナリティーがある。

この概念によって統合失調症の理解が進んだといえる。

この当時は抗精神病薬も開発されておらず、果敢に精神分析家が

精神病の治療に挑んでいる。

 

 

フロイトを、受け継ぎ、そして、超える

無意識的幻想と内的対象

 メラニー・クラインは自らを「フロイトの後継者」と位置づけていたようだ。

無意識的幻想という概念そのものは、既にフロイトが論じている。

フロイトは誘惑理論を撤退させて、外傷が想像上の出来事に起因する、外傷は子どもの幻想であるという理論へと移行した。この時点で子どもの「無意識的幻想」という考えを導入している。

 

しかし、この考えは非常に限定的なものであり、クラインはかなり早期の段階から子どもが無意識的な幻想の世界を持っていることをダイナミックなプレイの記述から描いている。

 

幼少時期の環境における体験よりも精神内界の体験を重視していく視点を開いていった。さらにその視点は子どものプレイのみならず、成人の治療においても重要なものとなっていく。

 つまりは、現実の客観的な対象とは別に、精神内界にある内的な対象の認識である。

「あなたは、その心の内に、どんな対象を持って、

 そしてその対象とどんな関係を持っているのでしょう」

そんな思いをこころに持ちながらセラピストはクライエントとやりとりをしていく。

その内的対象の物語を辿りながら、

時にその内的対象そのものを実演しながら、

その内的対象をめぐる空想の世界をともにする。

それが精神分析的な心理療法ともいえるだろう。

 

 

メラニークラインとフロイト

第2,3回 メラニークラインの対象関係論

5月6月と、メラニークラインを中心に話が進む。

クライン派精神分析をつくった人である。

たいへんな女性である。

フロイト以上に精神分析的であるとまでいわれた、このメラニー・クライン。

いくつもの喪失を体験し、転んでもただでは起きないというありようである。

26歳の時に抑うつに陥り、32歳からフィレンチーの分析治療を受けている。

その頃からフロイトに興味を持ち、著作を読み、感銘を受け、

精神分析の世界に足を踏み入れていく。

フロイトには多くの弟子たちがいるが、

クラインは直接このフロイトから指導をうけたわけではない。

 

 

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アブラハムの躁うつ病研究

 第一回イントロダクション 4.21.2019 その3

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アブラハムは入院中の躁うつ病患者の治療を通して、精神分析の理論を発展させた。

彼の理論に寄れば、躁うつ病の固着点は肛門期前期と肛門期後期にあるとされた。

フロイトの理論の中でもっとの重要な時期は男根期である。

この時期におけるエディプスコンプレックスをめぐるテーマの重要性を覆し、むしろ早

期の精神発達に注目する考え方はフロイトの理論の離反ともいえる。フロイトの忠実な

弟子というイメージが強いアブラハムであるが、実際はフロイトの理論をさらに展開し

てそれを超えていく考えを打ち出している。

 子どもの親への反発に対して、親側もガチでむきになる場合もあれば、何となく許し

てしまう場合もあり、それは子どものパーソナリティーや親子の相性によるように思

うが、フロイトユングの関係とフロイトアブラハムの関係の成り行きの違いは、

そうしてみるといつの世もどこの世界でもよく似たことが起きていると思える。

 

アブラハムは、この肛門期におけるアンビバレント、愛と憎しみのせめぎあいの問題を

重要視した。この時期の投影や取り入れといった機制が持つ意味合いも重要なものとし

て捉えている。そしてこれらの理論はその後メラニークラインへと大きな影響を与えて

いく。クラインが取り組む3歳以前の子どもたちへの精神分析的治療を応援する。

 この件についてフロイトは批判的な手紙をアブラハムに送っているようだが、これに

対しては、早期の乳幼児期の子どもへの臨床的研究がその後の精神分析の発展に重要な

ものになるだろうと言い、クラインを擁護したという。

 

その後、アブラハム躁うつ病治療を通して得た考えがフロイトにも影響を与えてい

き、フロイトは「悲哀とメランコリー」(1917)という論文をかく。

これがフロイトにおける対象関係論的な視点のスタートとなり、さらには超自我形成に

関連した理論へと流れていく。

 

 アブラハムの論文集の中、特に「心的障害の精神分析に基づくリビドー発達史論」に

おいては、躁うつと強迫との密接と両病理の差異について論じられている。

 

うつの病理は、愛する者に対しての幻滅を埋めるために対象を取り入れて体内化する。

対象をかみ砕きむさぼり食うというカニバリステックな活動への退行である。体内にあ

る対象は糞便と同じような価値と持つものとなり、それを排出することと保持すること

の葛藤がそこに起きる。口唇サディズムへの退行である。

強迫神経症においても対象の保持と支配が問題になるが、うつのような全面的な対象の

体内化ではなく、部分的であり、対象は外界に置かれる形になる。

 

 

フロイトとアブラハム

 



第一回イントロダクション その2

対象関係論の源流として、

フロイトの考える「対象」とアブラハムの考え方が紹介された。

 

クラインの源流を辿るとまた、そこにフロイトアブラハムがいるようにも思われる。

クラインは、その論文の中で、A.フロイトに対抗して「自分こそがフロイトを継承する

考え方をもつ者であり、アンナではなく自分なのだ」と言い放っているのには驚く。

 

フロイトの弟子の中で同時期を生き、性格もフロイトとの関係も対照的なのは、

ユングアブラハムである。

これについては、セミナーの中で松木邦裕先生が少し触れていた。

ユングのようないい加減な人間ではないが、非常にまじめで実直、フロイトの信頼も

篤かったがあまりおもしろみのない人間だったようだ」と。

以前、藤山直樹先生が、「アブラハムユングフロイトのお気に入りの弟子だった

が、フロイトが高く評価したのは、ユングのはそのセンスであり、アブラハムはその人

格だ。アブラハムは自分を裏切らないと信頼していたようだ」とも言っておられたよう

に記憶している。

 アブラハムユングは仲が悪く、二人の険悪な関係を取り持とうとして両者を説得し

たことがあったようだ。結局アブラハムフロイトの助言を受け入れ和解の手紙をユン

グに送ったようだが、ユングはそれを無視した。

フロイトの弟子として、このアブラハムユングの他にランク、フェレンチイ、アレキ

サンダーの5人が弟子5人組であるが、その中でもアブラハムは一番フロイトに忠実

に、その理論にそって独自の考えを展開していった人のようである。しかし、精神分析

業界界隈では、その堅物でリジッドなところが気にくわないと人気はあまりなかったようだ。

とはいえ彼は組織運営の力もあり、のちにベルリンで訓練機関を設立し多くの弟子の育成をしている。

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彼が育てた弟子の一人に、かのメラニー・クラインがいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころにかかわること 

第一回イントロダクション 4.21.2019 その1

東海中部精神分析セミナー第32期が4月21日に始まった。

今年は松木邦裕先生が対象関係論の講義を8回連続でお話しくださる。

あのベストセラー「対象関係論を学ぶ」の続編のような内容である。

大変楽しみである。

精神分析的な心理療法

治療者とクライエントの心の交流を通して、

クライエントのこころの質が変化していくことを目指す方法である。

そして、クライエントが直面している自らの困難や苦悩を、クライエント自身が自らで

抱えることができるようにするものである。

松木先生曰く

「込み入った不幸を、当たり前の普通の不幸に変えていくものである」

 

精神分析のおはなし

今年度も新しくなって、精神分析セミナーが始まる。

今年は対象関係論を一から基礎に戻って学び直す企画だ。

クラインに始まり、ビオンを経て、新しい現代クラインはへと展開する。

東海中部精神分析セミナー、始まり始まり。

来週日曜日4月21日がスタートである。

 

松木先生がまず8回連続で講義をされる。

もちろんその内容をそのままご紹介することはできないが、

私がそこで考えたことや印象に残った見解、

さらに興味深く思い、関連した書籍などにあたってみて

得た知識や考えたことなどをまとめていきたい。